機転
結婚式に2次会に参加した27歳独身の私。
司会の始めの挨拶が、あったようなないような・・・。
すぐに乾杯の挨拶担当として私の名がコールされる。
水泳選手がコールされた時、あそこの位置を修正していたのではかっこ悪い。
すぐに立ち上がり、声援に答えながらイヤホンを外すのがかっこいい。
たとえ、曲がAKB48でも構わない。
「すぐに」と言うところがポイントなのだ。
と知っている私は、乾杯の「ぱ」の字あたりで前に飛び出していた。
その時、ふと違和感を感じた。
しかし、深くは考えなかった。
乾杯の挨拶までの過程の薄さに、きっと戸惑っている自分がいるのだろう。
そう思うことにした。
初デートでホテル前集合みたいな違和感に違いない。
思い切って、自己紹介をすると、これが見事にすべった。
まるでウォータースライダーのようだ。
と心の直喩をかます事で、すべりショックを回復した。
さらに言葉を続けると、ややうけた。
授業参観のような温和な雰囲気が生まれたが、
その中に「大丈夫かな?」という母性本能から来る視線を感じずに入られなかった。
その視線で冷静に戻った私は、忘却した違和感の招待に気付いてしまった。
なんと、誰もグラスを持っていないのだ。
というか、自分も持っていないのだ。
・・・。
仕方なく、目の前の友人に尋ねてみる。
「あれっ、グラス持たなくていいの?」
困惑の表情を浮かべ、ちょっと周りを見る友人。
・・・。
どうやら、周りの友人達も周りを見るしか対策がないらしい。
答えが見つからないまま、「とにかくいいから」と、
無理やりな答えを友人は出した。
その答えに、周りも賛同した。
もし、就職面接の志望動機でこの答えを言ったならば、
この後何を続けても、落ちていくだけだろう。
同様に、私のこの状況も後は落ちていくだけなのだ、と確信した。
「どうせなら元気に行きましょう♪乾杯!!」
と言ってはみたものの、誰も反応はしなかった。
パルプンテにこんなのあったな・・・。
と思いつつ、私の状態はメガンテ直後であった。
楽しみにしていた体育のバスケが、マット運動に変わった時より、
2000倍ぐらい私の気持ちは消沈した。
私の耳をしまって欲しかった。
そして、無音の世界に私を・・・。
全て納得したわけではないが、きっと私が悪かったのだろう。
機転を利かせてグラスを配り始めればよかった。
「1・2・3・ダーッ」でもやればよかった。
機転の利く大人になりたい!27歳試練の秋・・・。