交渉
式も終わり、記念撮影となった。
まさか、記念撮影がこんなに面白いものだと思わなかった。
物凄く几帳面に列を修正され、ちょっとうざさが漂っていた中、
今までにこやかなカメラマンが突然動く。
子供をあやすカンカン音のなるおもちゃを笑顔で振っているのだ。
それと共に、今まで列に注意していたおっさんが拍手を始める。
自然とみんなが笑う。
プロの技。
感心すると共に、もらった!というテロップが流れる。
この日、披露宴で歌う事になっている私は、全くのノープランだった。
そこにこんな美味しいものが転がり込んできたのだ。
写真を撮り終わると、すぐに交渉に入る。
「今日、披露宴で歌を歌うのですが、
今のカンカンがとても面白いとおもったので、
貸していただけませんか?」
おそらく、今まで言われた事もないのだろう。
初めて渋谷に来た修学旅行生の切符購入時の顔をされる。
やはり、商売道具は貸せないとのこと。
いいんです。いいんです。
すべり知らずの道具があると知っただけで・・・。
引き出物のカタログの中に、このカンカンがあり、
今真剣に頼むかどうか悩んでいるのであった。