浮沈

金曜日の事です。

会議が終わり、事務所によると、たくさんの荷物。

とりあえず、紙袋をもらい、いつもよりは綺麗に詰め込み、

いざ菊名へ!と意気込むのでした。

溝の口の駅まで歩く途中、あまりに重い紙袋をどうに軽く感じたいと、

色々な持ち方を研究してみたのですが、中々答えが見つかりません。

初めてのデートに対する髪型チェックでも、

もうちょっと早く答えが見つかるものなのに・・・。

そういえば、最近デートなんかしてないなぁ〜。

そんなドラマ初回のOLのような言葉を心でつぶやいた時です。

ビリビリビリ。

そう、ストッキングに電線が・・・。

ではなく、紙袋が細胞分裂を始め、中身がはじけとんだのです。

俺達は自由だ!

そんな叫びが聞こえるかのように、見事にはじけ飛ぶ荷物たち。

自由を手にした彼らを、私は天使の微笑でただ見つめるのでした。

と思ったのですが、残念ここは大都会東京。

の空気がちょっと漂う神奈川県溝の口

中途半端に冷たい視線が私に一転集中します。

その視線は、私にとって虫眼鏡で集めた太陽光のよう。

ただただ燃やされる私。

しかし、そこに一筋の光。

若い女性が、産卵した荷物を、いえ、散乱した荷物を拾ってくれようとしています。

いつものスピードで動けば、私の方が近い距離にあるのを感じ、

私は反射的に、「界王拳二億分の一倍」を使うのでした。

ありがとうございます、とお礼を言いながら荷物を受け取り、

顔見てみると、気合の入った感じのお姉さま。

赤い実はじけず・・・。

名乗るほどのもんじゃねぇよ!そんな勢いで立ち去る女性の後姿に、

お勤めご苦労様です!と礼をする私。

そんな女性のストッキングには電線が走っていたのでした。